大きな地震の度に発生する天井崩落事故。天井の安全性は全国的な課題になっていました。今回開発されたのはそうした問題の解決に大きく役立つ全く新しいファイバーシート型の天井システムです。
主役は地域の会社でテント屋根等の施工・販売を主力にする「ファインアートかわばた」です。同社の社長牛垣和弘さんは、以前から膜天井の安全性に注目し、既存の天井に置き換えることができる高性能で美しいものを世の中に出したいと考えていましたが、どうしても克服できない問題があるということで当センターがサポートをすることになりました。
―大きな市場を生む膜材を使った画期的なアイデア
ヒアリングをしていくと、牛垣さんが考えるシート型天井とは、ガラス繊維の強靭なシートに強い張力をかけて平らに隙間なく張り詰め、既存の天井の代わりにするもので、これだと極めて軽量で落下しにくく、仮に落ちても怪我などをしにくいとのこと。更に壁に金具を取り付けて両側から張り上げる仕組みのため、足場も不要、工期も通常の天井よりも大幅に短縮できそうなこともわかりました。製品化すれば、天井の耐震化が必要な建物の新たな選択肢として大きな市場が狙える可能性があります。
―地域企業との連携による課題の解決
そこで製品化の課題を確認したところ、十分な張力をかける優れた金具が世の中に存在しないのが最大の原因とのことでした。確かに大面積でしっかり張力をかけるためには通常の金具では難しそうです。しかし同社には金具を自社で製作する設備はありません。そこで当センターでは、従来主流だった固定式の金具ではなく、締め上げることができる可動式の金具のアイデアを提案し、その設計のために地域の設計・金属加工の会社であるアイダメカシステムさんを紹介しました。ちなみに当地域には数多くの技術系企業がありますが、これまで相互のつながりが薄く、当センターでは積極的に異業種の連携を進めています。アイダメカシステムの社長の丸山さんは技術的な困りごとに進んで解決策を考えてくれる頼もしい人です。今回も全面的に協力をしてくれることになりました。
―膜天井システムの誕生、そして全国へ
その両社の連携で生まれたのが今回の製品です。十分な張力、しわのない美しい仕上がり、簡単で短工期の施工が実現し、張り上がりはとてもシートとは思えません。顧客の評価も上々でした。2つの物件で実際に施工をし、性能を確認したところで世の中に全面的に出すことにしました。このシステムに関心を持ったある建設会社と連携し、普及のための組織を構築し全国の施工会社をネットワークしていくことを計画しています。
代表の牛垣社長にお話を伺いました