津山市の大型製缶製造企業であるダイコク工業株式会社が、従来の手作業の10分の1の時間で溶接痕(溶接ビード)を切削除去できる革新的な新製品「ダイコクビードカッター」を開発しました。
最大の特徴は、誰でも簡単に、早く、品質のバラツキのない仕上がりに加工することができることです。これにより、生産性が大幅にアップするだけでなく、力仕事が不要なうえに静音で、粉塵が発生しないので労働環境の改善にもつながります。
この製品開発は、大國洋治社長のアイディアとそれを実現するための細かな工夫や情熱の結果ともいえるのです。その開発ストーリーをご紹介します。
「ダイコクビードカッター」の概要は、YouTubeでご覧いただけます。
代表の大國社長にお話をお伺いしました
―新製品開発のきっかけ
仕事で付き合いのあった近隣の鉄骨加工企業(鉄骨ファブリケーター)の工場長から、建築用鉄骨建材の角形鋼管(コラム)を溶接して結合するための加工作業において、重要な作業の一つである溶接ビードの除去作業をもっと楽にできないだろうかと相談がありました。話を詳しく聞いてみると、「最近深刻な人材不足の一方、大型建築物はオリンピックや万博、大都市部の商業再開発等で大型建築物の建設が好調のため受注量が多い。しかし、重労働のため、せっかく採用した若手社員はすぐに辞めてしまう。何とかならないものか…」。それを聞いて、ふとアイディアが浮かんできました。
それとほぼ同時期に、市内鋼材卸会社の福岡鋼業株式会社の担当者からも、同様の相談がありました。そこで、弊社は業界が違うので、よくわかっていませんでしたが、現場ではすごく困っていて、ニーズは高いのではないかと感じました。
―つやま産業支援センターに相談
お客様の大切な空間をつくる仕事なので、お客様が頭の中に描いているイメージや思いを汲み取り、それを形にできることが最大の強みです。創業から積み重ねてきた技術や知識を活かし、自社でヒアリングから施工・メンテナンスまで全てを一貫して行っているので、お客さまのご要望に沿った商品を提供させていただく自信があります。
―市内企業が協力して開発
当社は製缶業なので、機械加工等はできません。そこで、市内金属加工業等をグループ企業として展開するツチダ産業株式会社に部品の製造や調達をお願いしました。部品の機械加工や調達部品に至るまで、さまざまなアドバイスを受けながら試作機第1号を作り上げました。
また、最初に相談いただいた福岡鋼業には、試作機の動作確認のための資材提供や業界動向などのアドバイスをいただきました。
―新製品開発で苦労した点
試作機をテスト運転してみると、やはり一発ではうまくいきませんでした。ツチダ産業や福岡鋼業の担当者とアイディアを出し合い、加工品質を保ちつつ、シンプルな構造かつ使い勝手のいいものになるよう、幾度となく試作機を製作し、ひとつずつ課題を克服していきました。試作には費用もかなり掛かりましたが、つやま産業支援センターには新製品開発や特許取得費用の補助金制度があり、それらを活用させていただきました。また、試作機の製作に係る関係企業などとの調整や支援機関なども紹介していただきました。
―仕事に対する信念
当社はもともと創業時から大型の製缶製品の製造を専門としてきたことから、その溶接技術には自信がありました。パソコンがまだ珍しかった時代からCADを導入し、品質には細心の注意を払って、丁寧かつ実直に仕事に取り組んできました。
また、困って相談に来られた方の問題は必ず解決できるように努力するという企業理念が創業者である会長の頃から浸透しています。地元農家の農具のちょっとした補修からモニュメントの製作まで、幅広く対応してきました。もちろん、本業でも、お客様のニーズに対応するため、品質や生産性を上げるためにさまざまな治具を自社で考え、製作してきました。その数は50以上にもなります。