内田縫製は津山市北東部の美しい山々に囲まれたロケーションで、高級ジーンズを中心に製造する本格的な縫製工場です。長年、有名ブランドのOEMなどを手がけ、周囲の信頼も厚く順調に経営をしてきましたが、社長の内田政行さんにはいつかは自社のブランドを持ちたいという思いがありました。
しかしジーンズに関する知識や技術は随一であっても、製品企画や販売などの経験はなく、これまで実現に踏み切れずにいました。そんな中で2015年からつやま産業支援センターが同社のブランド化を応援することを決め、そこから急速な展開が始まりました。
―既存のブランドには無い新しい価値作り
ジーンズは既に海外、国産とも多数の有名ブランドが存在しています。そういう中で後発としてブランドを作っていくにはそれなりの工夫が必要です。そこでまずはじっくり時間をかけて意見交換や現状分析などを行い今後の方向性を固めていきました。企業さんが決意して事業を立ち上げる以上、私たちも必ず成功して欲しいと考えるからです。
―経営者と顧客の思いを合わせる
企業支援において当センターが大切にしているのは、「経営者の思い」と「顧客の思い」を合わせる作業です。味気ない言い方で言えば、需要と供給をマッチさせるわけですが、そこに「思い」という要素が加わると感動やプラスの価値が生じると考えています。
―多くの人に愛される、津山ジーンズ誕生
こうして形はシンプルだが、丈夫で上質で飽きが来ず、長くはき続けるうちに自分だけのジーンズに育てていける「Genuine Jeans」(正統派ジーンズ)というコンセプトが生まれました。流行の表面加工や奇抜なステッチなどは一切行わず、素材と縫製にこだわり、作り手の顔が見えるこれぞファクトリーブランドというものを目指そうということになり、内田社長は糸や生地のメーカーにも働きかけ、心のこもった本当に素晴らしい製品を作り上げられました。ブランド名もあえてカタカナを避け「内田縫製」で行くことにしました。首都圏で販売を開始すると男女問わず、多様な年齢層の方がファンになって下さり、このような本物のジーンズが求められていたことが改めて実感されました。
代表の内田様にお話を伺いました
―事業内容について
創業は昭和43年で、法人化は昭和57年にしました。創業当時から40年以上ジーンズに携わっていますが、当初は主にナショナルブランドのジーンズ縫製を下請け専門で行っていました。近年は大手一流ブランドや有名なセレクトショップへのOEMなど高級品に特化しており、自社ブランドである【津山ジーンズ】の製作・販売も行っています。
―御社の強み
私たちは、「納期」と「品質」を必ず守るよう努力しています。私たちはそれらを実現するために、特殊な工程を外注するのではなく、可能な限り自社で行えるよう設備を整えています。自社で行うことによって、品質も保たれ全体の動きが見えるため、納期遅れ等が起きないよう徹底して仕事をしています。
―オリジナル商品を作ろうと思ったきっかけ
5年程前から、自社ブランドを作り直接お客様へお届けしたいとは考えていました。しかし、世の中に何千何百とジーンズがある中、自分たちで作ったところで売れないだろうと思い行動に移せませんでした。
2年前につやま産業支援センターやデザイナーの方の全面的なご協力もあり、今回私たちのオリジナルジーンズ”津山ジーンズ”を作り上げることができました。
―オリジナル商品を作る際に苦労した点
ジーンズ作りに関しては、40年以上培ったノウハウがあり、ジーンズの生地やそれにつける付属品・ボタンなども熟知しているので、最高のジーンズを作る自信はありました。
しかし、デザインやブランディング・コンセプト等のブレない商品を作るための基盤作りは、今まで経験したことがなかったので苦労しました。
―オリジナル商品を作って良かったと思う点
ジーンズを買っていただいたお客様から、直接感想が聞けるのは嬉しいです。例えば、穿いた瞬間に「あ、なんか穿き心地がいいな」だったり、「もう1本欲しい」と言っていただけた時は作って良かったと心から思いました。
私たちは今まで目立つことのなかった田舎の工場でしたが、少しずつ知名度も上がって来ていると思います。スタッフ一人一人も、自分たちでオリジナルジーンズを作ることに対する誇りも持ち始め、モチベーションが上がってきているように感じています。
―オリジナル商品のこだわり
津山ジーンズは、シンプルでオーソドックスなスタイルで、10年や20年穿けるデザインにしています。使用する生地やボタン・ファスナーなどの付属品も日本国内の一流メーカーで作られた物で、その中でも更に優れた物を使用しています。縫製に関してはノウハウを注ぎ込み、様々な工夫を凝らしています。例えばポケット底の補強や中盛ループなど、経年で少しずつ生じる自分だけの色の変化を楽しめます。ジーンズが育っていく過程を楽しんでいただける、ジーンズ好きに愛される”本物”のジーンズに仕上げています。
―今後の目標や夢
今後は、ジーンズ生地を活かした新商品の開発も進めていきたいと思います。例えばクラッチバッグのような小物や、コートのような衣類も考えています。
また、会社としては、スタッフ全員が一流のジーンズ職人になり、一流の仕事をする一流の工場を目指しています。そして、ジーンズを通して、少しでもアパレル産業を盛り上げたいという大きな夢を持っています。