技術を持つ中小企業にとってよくある悩みの一つは「販路がない」というものです。せっかく素晴らしい商品を作り出したとしても売り先がなければ確かに在庫の山ができるなど残念な結果になりますね。
もちろん今はあらゆるものをネットで販売することができる時代になりましたが、中小企業がネットを事業として成立させるにはそれなりのハードルがあります(コストや運営など)。またネットショップでは類似商品検索が容易なうえに顧客の価格感度が高いため余程ユニークな製品でないと価格競争に巻き込まれやすくなります。そこで今回はもう一つ別の方法について考えてみましょう。
当センターでお勧めしているのは「製販連携開発」という手法です。これは小売店等(販売事業者)と連携して商品開発・製造を行うものです。利点としてはまず、商品を確実に連携先の店舗などで販売してくれるため開発リスクを最小化できます。また長期的な関係を維持しやすく安定的な販路になります。更に販売店のネットワークに乗れば全国に販売ができるようになります。実際当センターでも複数の製品で地域中小企業と大手企業の製販連携開発をコーディネートし市場化を実現しています。
経営者の中には、大手の企業が本当に中小企業と販売連携などしてくれるのか不思議に思う方もおられるでしょう。もちろんいつも簡単にいくわけではありませんが、しかしそうした連携は十分実現可能です。そこにはそれなりの理由があります。 近年販売で苦戦をする小売事業者が増えています。その要因は、先述のネットショップとの競合、また、ファーストファッションが典型ですが、優れたサプライチェーンを
生かした安価でバラエティに富んだ直営店の増加などです。単にものを仕入れてマージンを取って売るという従来の販売方法が通用しなくなってきたわけです。そこで小売事業者は特色があり顧客をひきつける商品を目を皿のようにして探しているのです。
顧客の心を打つ製品とは例えば以下のようなものです。
①従来世の中に存在しなかった商品
②作り手の顔が見える高品質商品
③自然や本物を感じることができる商品
④高いオリジナリティを持つ商品 など
特に小売事業者は顧客との関係性が作れる商品を求めています。顧客のリピートが増えるためです。商品化に「ストーリー」があるなど売る際に「語りやすい」商品が理想的ですが、実はこういう商品づくりほど中小企業が得意な分野であると思います。一つでも顧客に響く商品があれば、小売店ではそれを中心に他の商品もまとめて取り扱いをしてくれるようになります。販売のプロからアドバイスをもらいながら商品の開発をすることはより良い商品づくりの早道でもあります。
中小企業にとって一気に可能性が広がるこの製販連携開発は、下請けから脱却する最初のステップとしても是非検討頂きたい方法です。